コラム

民事信託~信託の精算について~

信託

信託終了時には清算が必要

 信託は、信託の併合により終了した場合及び信託財産についての破産手続開始の決定により終了した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除き、終了後に清算をしなければなりません(信託法175条)。また、清算が結了するまでは、信託はなお存続するものとみなされます(同法176条)。信託が終了した時以後の受託者を『清算受託者』といいます(同法177条)。清算受託者となるのは、原則として、信託終了時の受託者です。

清算受託者の職務

 信託法177条には、清算受託者の職務について以下のように定めています。

1.現務の結了

2.信託財産に属する債権の取立て及び信託債権に係る債務の弁済

3.受益債権(残余財産の給付を内容とするものを除く)に係る債務の弁済

4.残余財産の給付

清算受託者の権限

 清算受託者は、信託行為に定めがない限り、信託の清算のために必要な一切の行為をする権限を有します(信託法178条1項)。そして、以下に該当する場合には、清算受託者は信託財産を競売にかけることもできます(信託法178条2項)。

①受益者又は帰属権利者が信託財産に属する財産の受領を拒み、又は受領することができない場合において、相当の期間を定めて、その受領を催告したとき

②受益者等の所在が不明なとき

 ①の場合、信託財産を競売に付したときは、遅滞なく、受益者等に対し、その旨の通知を発しなければなりません(信託法178条3項)。ただし、損傷その他の事由によって価格が低下するおそれのある物については、催告をせずに競売に付することができます(信託法178条4項)。

清算中の信託財産についての破産手続の開始

 清算中の信託において、信託財産に属する財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算受託者は、直ちに信託財産についての破産手続開始の申立てをしなければなりません(信託法179条)。

条件付債権等に係る債務の弁済

 清算受託者は、条件付債権、存続期間が不確定な債権その他その額が不確定な債権に係る債務を弁済することができます。この場合、これらの債権を評価させるため、裁判所に鑑定人の選任を申し立て、鑑定人の評価に従って弁済しなければなりません(信託法180条1項・2項)。ただし、清算受託者、受益者、信託債権者及び帰属権利者の間に別段の合意がある場合には、この限りではありません(同条6項)。

債務の弁済前における残余財産の給付

 清算受託者は、信託法177条2号及び3号に掲げる債務を弁済した後でなければ、信託財産に属する財産を残余財産受益者又は帰属権利者に給付することができません。ただし、当該債務の弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、債務を弁済する前であっても、信託財産に属する財産を給付することができます(信託法181条)。

残余財産の帰属

 清算後に残った財産は、信託行為において残余財産受益者又は帰属権利者として指定された者に帰属します。これらの者の指定がない場合や、指定された者全員がその権利を放棄した場合には、原則として、委託者又はその相続人その他の一般承継人が帰属権利者として指定されていたものとみなされます。それでも帰属先が定まらない場合には、残余財産は清算受託者に帰属します(信託法182条)。

最終の計算

 清算受託者は、その職務を終了したときは、遅滞なく、信託事務に関する最終の計算を行い、信託が終了した時における受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)及び帰属権利者のすべてに対し、その承認を求めなければなりません。受益者等が承認を求められた時から1か月以内に異議を述べなかった場合には、その計算を承認したものとみなされます。最終の計算が承認された場合には、清算受託者の当該受益者等に対する責任は、原則として免除されたものとみなされます。ただし、清算受託者の職務の執行に不正な行為があった場合は、この限りではありません(信託法184条)。

※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。

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弁護士

小西 憲太郎

所属

大阪弁護士会所属

刑事弁護委員会

一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事