民事信託~信託の分割について~
信託の分割について
信託の分割とは、ある信託の信託財産の一部を、受託者を同一とする他の信託又は新たな信託の信託財産として移転することをいいます。信託の分割には、「新規信託分割」と「吸収信託分割」の2種類があります(信託法2条11項)。
新規信託分割
新規信託分割とは、ある信託の信託財産の一部を、受託者を同一とする新たな信託の信託財産として移転することをいいます(信託法2条11項)。
信託行為に別段の定めがある場合
各信託行為に新規信託分割に関する別段の定めがある場合には、その定めに従います(信託法159条3項)。
信託行為に別段の定めがない場合
新規信託分割は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができます。この場合、以下に掲げる事項を明らかにしてしなければなりません(信託法159条1項)。
- 1. 新規信託分割後の信託行為の内容
- 2. 信託行為において定める受益権の内容に変更があるときは、その内容及び変更の理由
- 3. 新規信託分割に際して受益者に対し金銭その他の財産を交付するときは、当該財産の内容及びその価額
- 4. 新規信託分割がその効力を生ずる日
- 5. 移転する財産の内容
- 6. 新規信託分割により従前の信託の信託財産責任負担債務でなくなり、新たな信託の信託財産責任負担債務となる債務があるときは、当該債務に係る事項
- 7. その他法務省令で定める事項
第7号の「その他法務省令で定める事項」は、信託法施行規則16条で以下のように定められています。
- 1. 二以上の信託により新規信託分割が行われるときは、当該新規信託分割をする他の信託についての次に掲げる事項その他の当該他の信託を特定するために必要な事項
イ 委託者及び受託者の氏名又は名称及び住所
ロ 信託の年月日
ハ 限定責任信託であるときは、その名称及び事務処理地 - 2. 前号に規定する場合には、当該新規信託分割をする他の信託の信託行為の内容
- 3. 法第百五十九条第一項第三号に規定する場合には、同号に掲げる事項の定めの相当性に関する事項
- 4. 前号に規定する場合には、従前の信託(新規信託分割をする他の信託がある場合にあっては、従前の信託及び当該他の信託。以下この条及び次条第一号において同じ。)の受益者に対する金銭その他の財産の割当てに関する事項及び当該事項の定めの相当性に関する事項
- 5. 新規信託分割に際して、新たな信託の受益権を従前の信託の信託財産に帰属させることとするときは、当該受益権の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
- 6. 前号に規定する場合には、同号に掲げる事項の定めの相当性に関する事項
- 7. 従前の信託において直前に作成された財産状況開示資料等の内容(財産状況開示資料等を作成すべき時期が到来していないときは、次のイ又はロに掲げる書類又は電磁的記録の区分に応じ、当該イ又はロに定める事項)
イ 第二条第四号イに定める書類又は電磁的記録 当該書類又は電磁的記録を作成すべき時期が到来していない旨
ロ 第二条第四号ロに定める書類又は電磁的記録 法第二百二十二条第三項の規定により作成された貸借対照表の内容 - 8. 従前の信託について、財産状況開示資料等を作成した後(財産状況開示資料等を作成すべき時期が到来していない場合にあっては、信託がされた後)に、重要な信託財産に属する財産の処分、重大な信託財産責任負担債務の負担その他の信託財産の状況に重要な影響を与える事象が生じたときは、その内容
- 9. 新規信託分割をする理由
ただし、以下の場合には、委託者、受託者及び受益者の三者の合意がなくても、新規信託分割をすることができます。
信託の目的に反しないことが明らかであるとき
受託者及び受益者の合意によって分割することができます(信託法159条2項1号)。この場合において、受託者は委託者に対し遅滞なく、159条1項各号に掲げる事項を通知しなければなりません。
信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき
受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示によって分割することができます(信託法159条2項2号)。この場合において、受託者は委託者及び受益者に対し遅滞なく、159条1項各号に掲げる事項を通知しなければなりません。
委託者が現に存在しない場合
委託者が現に存在しない場合には、委託者の合意を要しません。また、受託者が単独で新規信託分割をする場合には、受益者に対し、所定の事項を通知しなければなりません(信託法159条4項)。
債権者の保護(信託法160条)
新規信託分割をする場合、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、新規信託分割について異議を述べることができます。ただし、当該債権者を害するおそれのないことが明らかな場合はこの限りではありません。
債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合、受託者は、以下の事項を官報に公告しなければなりません。
- 1. 新規信託分割をする旨
- 2. 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨(この期間は1か月を下ることはできません。)
- 3. その他法務省令で定める事項
また、受託者は、異議を述べることができる債権者で知れているものには、個別に催告しなければなりません。ただし、法人である受託者は、日刊新聞紙への公告又は電子公告を行うことにより、個別の催告に代えることができます(信託法160条3項)。
債権者が期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該新規信託分割について承認をしたものとみなされます(信託法160条4項)。また、債権者が期間内に異議を述べたときは、受託者は、当該債権者に対し、以下のいずれかをしなければなりません。ただし、当該新規信託分割をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りではありません(同条5項)。
- 弁済
- 相当の担保の提供
- 当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託
新規信託分割がされた場合において、第159条1項6号の債務は、新規信託分割後の従前の信託の信託財産責任負担債務ではなくなり、新規信託分割後の新たな信託の信託財産責任負担債務となります。この場合において、従前の信託の信託財産限定責任負担債務であった債務は、新たな信託の信託財産限定責任負担債務となります(信託法161条)。
また、個別に催告すべき債権者が催告を受けなかった場合には、その債権者は、債権の種類に応じ、一定の価額を限度として、新規信託分割後の従前の信託又は新たな信託の信託財産に属する財産をもって、債務を履行するよう請求することができます(信託法162条)。
吸収信託分割
吸収信託分割とは、ある信託の信託財産の一部を、受託者を同一とする他の信託の信託財産として移転することです(信託法2条11項)。
なお、信託が終了した場合には、この終了した信託を承継信託とする吸収信託分割はすることができないとされています(信託法174条)。
信託行為に別段の定めがある場合
各信託行為に吸収信託分割に関する定めがある場合には、それに従います(信託法155条3項)。
信託行為に別段の定めがない場合
信託の分割は、従前の各信託の委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができます。この場合、以下に掲げる事項を明らかにしてしなければなりません(信託法155条1項)。
- 1. 吸収信託分割後の信託行為の内容
- 2. 信託行為において定める受益権の内容に変更があるときは、その内容及び変更の理由
- 3. 吸収信託分割に際して受益者に対し金銭その他の財産を交付するときは、当該財産の内容及びその価額
- 4. 吸収信託分割がその効力を生ずる日
- 5. 移転する財産の内容
- 6. 吸収信託分割により分割信託の信託財産責任負担債務でなくなり、 承継信託の信託財産責任負担債務となる債務があるときは、当該債務に係る事項
- 7. その他法務省令で定める事項
第7号の「その他法務省令で定める事項」は、信託法施行規則14条で以下のように定められています。
- 1. 吸収信託分割をする他の信託についての次に掲げる事項その他の当該吸収信託分割をする各信託を特定するために必要な事項
イ 委託者及び受託者の氏名又は名称及び住所
ロ 信託の年月日
ハ 限定責任信託であるときは、その名称及び事務処理地 - 2. 吸収信託分割をする他の信託の信託行為の内容
- 3. 法第百五十五条第一項第三号に規定する場合には、同号に掲げる事項の定めの相当性に関する事項
- 4. 前号に規定する場合には、分割信託(法第百五十五条第一項第六号に規定する分割信託をいう。以下この条及び次条において同じ。)の受益者に対する金銭その他の財産の割当てに関する事項及び当該事項の定めの相当性に関する事項
- 5. 吸収信託分割に際して、承継信託(法第百五十五条第一項第六号に規定する承継信託をいう。以下この条及び次条において同じ。)に属する財産(承継信託の受益権を含む。)を分割信託の信託財産に帰属させることとするときは、当該財産の種類及び数若しくは額又はこれらの算定方法
- 6. 前号に規定する場合には、同号に掲げる事項の定めの相当性に関する事項
- 7. 吸収信託分割をする各信託において直前に作成された財産状況開示資料等の内容(財産状況開示資料等を作成すべき時期が到来していないときは、次のイ又はロに掲げる書類又は電磁的記録の区分に応じ、当該イ又はロに定める事項)
イ 第二条第四号イに定める書類又は電磁的記録 当該書類又は電磁的記録を作成すべき時期が到来していない旨
ロ 第二条第四号ロに定める書類又は電磁的記録 法第二百二十二条第三項の規定により作成された貸借対照表の内容 - 8. 吸収信託分割をする各信託について、財産状況開示資料等を作成した後(財産状況開示資料等を作成すべき時期が到来していない場合にあっては、信託がされた後)に、重要な信託財産に属する財産の処分、重大な信託財産責任負担債務の負担その他の信託財産の状況に重要な影響を与える事象が生じたときは、その内容
- 9. 吸収信託分割をする理由
ただし、以下の場合には、委託者、受託者及び受益者の三者の合意がなくても、吸収信託分割をすることができます。
信託の目的に反しないことが明らかであるとき
受託者及び受益者の合意によって分割することができます(信託法155条2項1号)。この場合において、受託者は委託者に対し遅滞なく、155条1項各号に掲げる事項を通知しなければなりません。
信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき
受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示によって分割することができます(信託法155条2項2号)。この場合において、受託者は委託者及び受益者に対し遅滞なく、155条1項各号に掲げる事項を通知しなければなりません。
委託者が現に存在しない場合
委託者が現に存在しない場合には、委託者の合意を要しません。また、受託者が単独で吸収信託分割をする場合には、受益者に対し、所定の事項を通知しなければなりません(信託法155条4項)。
債権者の保護(信託法156条)
吸収信託分割をする場合、分割信託又は承継信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、吸収信託分割について異議を述べることができます。ただし、当該債権者を害するおそれのないことが明らかな場合はこの限りではありません。
債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合、受託者は、以下の事項を官報に公告しなければなりません。
- 1. 吸収信託分割をする旨
- 2. 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨(1か月を下ることはできません。)
- 3. その他法務省令で定める事項
また、受託者は、異議を述べることができる債権者で知れているものには、個別に催告しなければなりません。ただし、法人である受託者は、日刊新聞紙への公告又は電子公告を行うことにより、個別の催告に代えることができます(信託法156条3項)。
債権者が期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該吸収信託分割について承認をしたものとみなされます(信託法156条4項)。また、債権者が期間内に異議を述べたときは、受託者は、当該債権者に対し、以下のいずれかをしなければなりません。ただし、当該吸収信託分割をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りではありません(同条5項)。
- 弁済
- 相当の担保の提供
- 当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託
吸収信託分割がされた場合において、信託法155条1項6号の債務は、吸収信託分割後の分割信託の信託財産責任負担債務でなくなり、吸収信託分割後の承継信託の信託財産責任負担債務となります。この場合において、分割信託の信託財産限定責任負担債務であった債務は、承継信託の信託財産限定責任負担債務となります(信託法157条)。
また、個別に催告すべき債権者が催告を受けなかった場合には、その債権者は、債権の種類に応じ、一定の価額を限度として、吸収信託分割後の分割信託又は承継信託の信託財産に属する財産をもって、債務を履行するよう請求することができます(信託法158条)。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
弁護士
小西 憲太郎
- 所属
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大阪弁護士会所属
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事