民事信託~信託の併合について~
信託の併合について
信託の併合とは、受託者を同一とする二つ以上の信託の信託財産の全部を一つの新たな信託の信託財産とすることをいいます(信託法2条10項)。
信託行為に別段の定めがある場合
各信託行為に信託の併合について別段の定めがある場合には、その定めに従います(信託法151条3項)。
信託行為に別段の定めがない場合
信託の併合は、従前の各信託の委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができます。この場合、次に掲げる事項を明らかにした上で、信託の併合を行わなければなりません(信託法151条1項)。
- 信託の併合後の信託行為の内容
- 信託行為において定める受益権の内容に変更があるときは、その内容及び変更の理由
- 信託の併合に際して受益者に対し金銭その他の財産を交付するときは、当該財産の内容及びその価額
- 信託の併合がその効力を生ずる日
このほか、併合する信託を特定するために必要な事項、各信託の信託行為の内容、受益者に交付する財産に関する事項、各信託の財産状況及び併合の理由などを明らかにする必要があります(信託法施行規則12条)。
また、以下の場合は、三者の合意がなくても併合することが可能となります。
信託の目的に反しないことが明らかであるとき
受託者及び受益者の合意によって併合することができます(信託法151条2項1号)。この場合において、受託者は委託者に対し遅滞なく、151条1項各号に掲げる事項を通知しなければなりません。
信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき
受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示によって併合することができます(信託法151条2項2号)。この場合において、受託者は委託者及び受益者に対し遅滞なく、151条1項各号に掲げる事項を通知しなければなりません。
なお、委託者が現に存在しない場合には、上記三者の合意による方法は適用されません。また、受託者及び受益者の合意による場合には委託者への通知は不要となり、受託者の意思表示による場合には受益者に対して通知することになります(信託法151条4項)。
受益者による受益権取得請求
信託の併合がされる場合、これにより損害を受けるおそれのある受益者は、受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求することができます。ただし、併合の意思決定に関与し、その際に併合に賛成する旨の意思を表示した受益者については、この請求をすることができません(信託法103条2項、3項)。
債権者の異議
信託の併合をする場合、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、信託の併合について異議を述べることができます。ただし、当該債権者を害するおそれがないことが明らかな場合には、異議を述べることはできません。
債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合、受託者は、次の事項を官報に公告するとともに、異議を述べることができる債権者のうち知れている者に対し、各別に催告しなければなりません(信託法152条2項)。
- 1. 信託の併合をする旨
- 2. 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨(その期間は1か月を下回ることはできません。)
- 3. その他法務省令で定める事項
もっとも、受託者が法人である場合には、官報公告に加えて、日刊新聞紙による公告又は電子公告を行うことにより、個別の催告に代えることができます(信託法152条3項)。
債権者が期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該信託の併合について承認をしたものとみなされます(信託法152条4項)。また、債権者が期間内に異議を述べたときは、受託者は、当該債権者に対し、以下のいずれかをしなければなりません(信託法152条5項本文)。ただし、当該信託の併合をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りではありません(同項ただし書)。
- 弁済
- 相当の担保の提供
- 当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託
信託の併合後の債務
信託の併合が行われた場合、従前の各信託の信託財産責任負担債務は、併合後の新たな信託の信託財産責任負担債務となります。また、従前の信託において信託財産限定責任負担債務であったものは、併合後も信託財産限定責任負担債務として取り扱われます(信託法153条、154条)。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
弁護士
小西 憲太郎
- 所属
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大阪弁護士会所属
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事