コラム

民事信託~信託の変更について~

信託

 信託は目的達成のために数年、数十年と長期にわたる事務処理がなされます。そのため、様々な事情の変化によって、信託の内容を変更したほうが、信託の目的に合致したり、受益者にとって利益となったりする場合もあります。
 本コラムでは信託の変更について解説いたします。

信託の変更について

 信託の変更とは、信託行為に定められた信託の目的、信託財産の管理方法、受益者に対する信託財産の給付内容その他の事項を、信託の成立後に変更することです。信託法その他の法令に反しない範囲で、委託者、受託者及び受益者の合意その他法定の方法により、これらの信託行為の定めを変更することができます。

信託行為に別段の定めがある場合

 信託行為に信託内容の変更に関する定めがある場合には、それに従います。(信託法149条4項)  別段の定めとしては、一定の場合に委託者又は受益者の同意を不要とすること、特定の者の同意又は承認を変更の要件とすること、変更権限を行使できる者や変更手続をあらかじめ定めることなどが考えられます。

信託行為に別段の定めがない場合

 信託行為に信託内容の変更に関する別段の定めがない場合、原則として、委託者、受託者及び受益者の合意によって信託を変更することができます。この場合、変更後の信託行為の内容を明らかにしなければなりません(信託法149条1項)。受益者が2人以上いる場合には、信託行為に別段の定めがない限り、原則として、すべての受益者の一致が必要です。
 もっとも、信託法は、一定の要件を満たす場合には、三者全員の合意を必要としない変更方法も定めています。

①信託の目的に反しないことが明らかな場合(信託法149条2項1号)

 受託者及び受益者の合意で変更することができます。
 この場合、委託者に対し遅滞なく変更後の信託行為の内容を通知しなければなりません。

②信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかな場合(信託法149条2項2号)

 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示によって変更することができます。
 この場合、委託者及び受益者に対し遅滞なく変更後の信託行為の内容を通知しなければなりません。

③受託者の利益を害しないことが明らかな場合(信託法149条3項1号)

 委託者及び受益者による受託者に対する意思表示によって変更することができます。

④信託の目的に反しないこと及び受託者の利益を害しないことが明らかな場合(信託法149条3項2号)

 受益者による受託者に対する意思表示によって変更することができ、受託者は委託者に対し遅滞なく変更後の信託行為の内容を通知しなければなりません。
 なお、委託者が死亡するなどして現に存在しない場合には、同条1項に基づく委託者、受託者及び受益者の三者合意による変更と、委託者の関与を必要とする同条3項1号の変更方法は利用できません。一方、信託の目的に反しないことが明らかな場合における受託者と受益者の合意など、委託者の関与を必要としない変更方法は、委託者の死亡後も利用できます(同条5項)。
 もっとも、これらの変更方法には、「信託の目的に反しないことが明らかであること」などの要件があります。その要件を満たさない変更は困難になる可能性があるため、長期の信託では、委託者の死亡後に誰が、どのような要件及び手続で信託を変更できるのかを、あらかじめ信託行為に定めておくことが重要です。

 裁判所による変更(信託法150条)

 信託行為の当時に予見することができなかった特別の事情により、信託事務の処理方法に関する信託行為の定めが、信託の目的、信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利益に適合しなくなったときは、委託者、受託者又は受益者は、裁判所に信託の変更を申し立てることができます(信託法150条1項)。申立てに当たっては、変更後の信託行為の定めを明らかにしなければなりません(同条2項)。裁判所は、法定の要件を満たすと判断した場合、信託の変更を命ずることができます。なお、裁判所による変更の対象は、信託内容全般ではなく、信託事務の処理方法に関する定めに限られます。

※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。

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弁護士

小西 憲太郎

所属

大阪弁護士会所属

刑事弁護委員会

一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事