コラム

民事信託~自己信託とは

信託

自己信託とは

 自己信託とは、平成20年から可能になった信託の方法で、委託者が自分自身を受託者として、一定の目的に従って自らの財産を管理又は処分する旨の意思表示により、信託を設定することをいいます(信託法3条3号)。
  通常の信託では、委託者と受託者との間で信託契約を締結します。これに対し、自己信託では、同一人が委託者と受託者を兼ねるため、信託契約ではなく、一定の事項を記載した書面又は電磁的記録による意思表示によって信託を設定します。このような方法は「信託宣言」とも呼ばれます。なお、自己信託の効力を発生させるためには、公正証書等の作成又は確定日付のある証書による受益者への通知など、法律所定の手続を行う必要があります。
 また、信託法163条2号により、受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したときは、信託は終了します。これは、受託者と受益者の間の信頼関係や監督関係が観念できず、他人のために財産を管理するという信託の構造が維持されないため、存続させる意義が乏しいと考えられているからです。

自己信託の注意点

 信託財産は受託者の固有財産から区別して取り扱われ、原則として、受託者の固有財産に関する債権者は、信託財産に対して強制執行等をすることができません。これを倒産隔離機能といいます。ただし、信託財産責任負担債務に係る債権に基づく場合などには、信託財産に対する強制執行等が認められます。また、不動産等については、信託の登記・登録をしなければ、信託財産であることを第三者に対抗できません。

信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。)をすることができない。(信託法23条1項)

 自己信託が債権者を害する目的で利用されることを防ぐため、委託者が債権者を害することを知って自己信託をした場合、一定の信託設定前の債権者は、信託財産に対して強制執行等をすることができます。ただし、この特則には受益者の善意に関する要件や、信託設定時から2年間という期間制限があります(信託法23条2項から4項)。また、これとは別に、詐害信託の取消し等が認められる場合があります(同法11条)。

自己信託の利用例

福祉型信託

受益者のために自身の財産を役立てたいものの、以下のようなケースで受益者が財産を管理することが難しい場合に活用することができます。

  • 浪費癖のある子を受益者にする
  • 認知症によって財産管理能力のない配偶者を受益者にする
  • 障がいを持つ子を受益者にする

事業承継信託

 経営者が自社株式を信託財産とし、後継者を受益者とする自己信託を設定することで、経営者が受託者として株式の議決権を行使しつつ、後継者に受益権を取得させる方法が考えられます。ただし、受託者は信託目的や受益者の利益に従って議決権を行使する必要があります。また、経営者の認知症等に備えるためには、後継受託者の指定などをあらかじめ定めておく必要があります。

※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。

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弁護士

小西 憲太郎

所属

大阪弁護士会所属

刑事弁護委員会

一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事