民事信託 ~受託者の地位、選任について~
民事信託における受託者は、信託関係者の中で中心的な役割を果たす者です。
本コラムでは、受託者の地位と選任について解説いたします。
受託者の地位について
信託法では、受託者を「受託者とは、信託行為の定めに従い、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいう」(信託法2条5項)と定義づけています。
受託者の選任について
受託者には、未成年者を除き、自然人だけでなく法人も就任することができます。もっとも、信託の引受けを営業として行う場合には、信託業法上の免許又は登録等が必要となります。また、法人が受託者となる場合には、その目的の範囲内であることも必要です。
一般的には、委託者の親族の中から、適切に財産管理を行うことができる人を受託者に選任しますが、委託者や受益者との関係、信託の目的や信託財産の内容など、総合的に判断することが必要となります。
受託者不適格者
未成年者は受託者になることができません(信託法7条)。
また、同一の信託において、信託管理人、信託監督人、受益者代理人は、受託者を兼ねることはできません(信託法124条2号、137条、144条)。
受託者は事務処理に適した人でないといけないか
受託者は、信託事務に関する計算や信託財産に属する財産・信託財産責任負担債務の状況を明らかにするための帳簿や、貸借対照表、損益計算書などを作成する義務が信託法によって課されています。
受託者がすべての事務を自ら処理できなければならないわけではなく、信託行為の定め等に従い、信託事務の一部を弁護士、税理士、司法書士その他の第三者に委託することもできます。
ただし、受託者は、原則として、委託先を適切に選任し、必要かつ適切な監督を行う義務を負います。そのため、委託先の業務内容を理解して適切に監督し、受益者への報告や通知等を行うことのできる者を受託者に選任することが望ましいでしょう。
受託者は受益者になれるか
受託者が受益者を兼ねることはできます。
但し、受託者が受益権の全部を固有財産として有する状態が1年間継続したときは、信託は終了すると定められています(信託法163条2号)ので注意が必要です。
受益者の任意後見人は受託者になれるか
任意後見人であることだけを理由として、受託者への就任が法律上当然に禁止されるわけではありません。任意後見人の権限は、任意後見契約によって付与された代理権の範囲に限られ、信託法上の受益者代理人とは制度上異なります。
もっとも、任意後見人が本人に代わって受益者の権利を行使する権限を有している場合に、同一人が受託者も兼ねると、受託者の監督や責任追及等の場面において利益相反が生じる可能性があります。利益相反行為については任意後見監督人が本人を代理しますが、継続的又は構造的な利益相反を避けるため、別の者を受託者に選任する、信託監督人を置くなどの対応を検討することが望ましいでしょう。
一般の法人は受託者になれるか
法人も、その目的の範囲内で受託者となることができます。信託業法が規制するのは、信託の引受けを営業として行う場合です。報酬を受け取ることだけで直ちに信託業に該当するわけではなく、収支相償性、反復継続性等を踏まえて個別に判断されます。信託業に該当する場合には、原則として、信託業法上の免許又は登録等が必要となります。
家族の財産管理を目的とする民事信託では、受託者の死亡等による交代のリスクを避けるため、一般社団法人その他の法人を受託者とする例もあります。ただし、一般社団法人であることや利益の分配を目的としないことだけで、当然に信託業法の適用を免れるわけではありません。複数の信託を継続的に引き受けるなど、信託の引受けを事業として行う場合には、信託業法との関係を慎重に検討する必要があります。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
弁護士
小西 憲太郎
- 所属
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大阪弁護士会所属
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事