民事信託~受益者代理人とは~
民事信託では、委託者、受託者、受益者などの信託関係人のほかに、信託管理人、信託監督人、受益者代理人などの受益者保護関係人の制度を設けています。受益者保護関係人は受益者の権利の実効性を確保するべく、信託を支えることとなります。
本コラムでは、受益者保護関係人のうち、受益者代理人について解説いたします。
受益者代理人とは
受益者代理人とは、その代理する受益者のために、当該受益者の権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者です。
受益者代理人を選任する目的は、「受益者保護」と「信託事務の円滑な処理」を図るという点にあります。
「受益者保護」を目的とする場合は、たとえば受益者の判断能力が低下した場合や、幼い子を受益者としたような場合です。そして、そのような場合であっても受益者代理人を選任しておくことによって、受益者代理人が当該受益者のために受益権に関する権利を行使し、受託者に対して必要な給付や対応を求めることができるようになります。
また、「信託事務の円滑な処理」を目的とする場合は、たとえば受益者が変動したり、多数であることによって信託事務の円滑な処理を果たしにくい場合です。そして、そのような場合であっても受益者代理人を選任しておくことによって、受益者代理人に受益者の権利行使を集中させることによって受託者の信託事務を円滑に進めさせることが可能となります。
受益者代理人の選任
受益者代理人は、代理する受益者を指定したうえで選任します(信託法138条1項)。受益者代理人は、複数の受益者に対し、その一部の代理人となることもできますし、全員の代理人となることもできます。また、1人の受益者に2人以上の受益者代理人を指定することも可能です。
なお、受益者の受益権の内容によっては、関係者間で利益相反が生じる可能性もあるので、設定に当たっては注意が必要となります。
受益者代理人は、信託行為においてその代理する受益者を定めて指定する制度です。もっとも、受益者代理人の任務が終了した場合には、委託者又はその受益者代理人に代理されていた受益者の申立てにより、裁判所が新受益者代理人を選任することがあります。
受益者代理人の資格
法人であっても受益者代理人となることはできますが、以下の者は受益者代理人となることはできません。
- 未成年者
- 当該信託の受託者である者
受益者代理人の報酬
受益者代理人は、信託行為に報酬を受ける旨の定めがある場合に限って、受託者に報酬を請求できます (信託法144条、127条3項)。
受益者代理人の権限と義務
受益者代理人には、信託行為に別段の定めがある場合を除き、その代理する受益者の権利(損失てん補責任等の免除を除く)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限があります(信託法139条1項)。
他方、受益者代理人は善管注意義務を負い、受益者のために誠実かつ公平に権限を行使しなければならないとされています。(信託法140条1項・2項)
なお、受益者代理人が選任された場合、代理される受益者は、信託法92条各号に掲げる権利及び信託行為において定めた権利を除き、自らその権利を行使することができなくなります (信託法139条4項)。
受益者代理人による事務処理の終了
受益者代理人による事務処理の終了事由として、以下のような場合が定められています(信託法143条)。
- 信託の清算の結了
- 委託者及び受益者代理人に代理される受益者が受益者代理人による事務の処理を終了する旨の合意をしたこと
- 信託行為において定めた事由
なお、受益者代理人の任務終了については、信託法141条により、受託者の任務終了事由等に関する規定が準用されています。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
弁護士
小西 憲太郎
- 所属
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大阪弁護士会所属
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事